農業体験農園は市民農園とは違います。市民農園の場合、土地だけを借り、農具や種苗は自分で用意し、自由気ままに作付できる利点があります。その反面、実技指導がないため、当初の意気込みと裏腹に、世話の仕方が分からず途中で止めて荒地のまま放棄されている畑がよく見られます。
農業体験農園では、受講者(入園者)は農園主が用意した肥料・種苗・農機具を用い、農園主が決めた作付計画に基づいて、ファームアドバイザーの指導のもとで畝づくりから収穫まで継続した一連の農作業をトータルに体験できます。受講者みんなが同じ野菜を育てます。そのことから体験農園ではすべての農業体験区画で野菜が同じように並んでいます。農業のプロの丁寧な指導を受けてどの区画でもりっぱな野菜が育つので、農園全体の景観はとてもきれいです。
農業体験農園は農業のプロから野菜の育て方や収穫の仕方を学ぶカルチャーファームです。野菜作りの講座を受講したい人は、まず農園主との間で農業体験の受講契約を結びます。受講者は年間に20回程度の実技講習会に参加し、農園主から割り振られた農業体験区画(1年間)において実際に野菜などを育て、野菜づくりの基礎とこつを学ぶことができます。
受講者はまったくの初心者であっても、プロの農家が作るものに勝るとも劣らない野菜を収穫できます。もちろん講習会のときだけでなく、いつでも自分の農業体験区画に出向いて、除草や水やり、追肥、収穫などをしたり、野菜が育つ様子を楽しんだりしてもいいのです。分からないことがあれば、ファームアドバイザーにいつでもなんでも質問できます。そして、収穫した作物はすべて受講者の自宅に持ち帰ることができます。
農園主との受講契約は2月に行い、野菜づくり体験は3月から翌年の1月末日まで期間です。1年間の大まかな流れは次の図のようになっています。2月には農園主が次年度のための農園の整備をするので、農園は利用できません。1月末までに収穫を終わらせてください。次年度の受講者の募集は12月〜1月に行います。
農業体験農園は、耕作の主体はあくまでも農家(農園主)です。農地を貸し出しているのではありません。受講者に農地を使って農業体験をしてもらい、受講料(講習費、種苗代、農具利用費、収穫物代金を含む)をいただくというものです。これまでになかった新しい農業経営の一つです。
農園主が自ら行う農業経営に参加し農業体験することが前提になっているので、受講者は自分の好きな作物を自由に作ることはできません。というにも、市民が許可もなく農地を借りて作物をつくることは「農地法」違反になるからです。農地法は戦後の農地改革の成果を維持するために制定されたもので、農地の所有者が耕作することを基本にしています。このため、農地の売買や貸し借り、宅地への転用について厳しい条件が付けられ、各市町村の農業委員会の許可を得ずに農地を借りて耕作はできません。だから、農業体験農園の場合も、耕作者はあくまで農家(農園主)であって、受講者は農家から農地を借りているのではなく、農園主(またはファームアドバイザー)の指導のもとで農業体験をしているという解釈になっています。受講者は自分の農業体験区域で栽培して育てた野菜を収穫して持ち帰られますが、手続き上は農家から買っていることになります。
なお、農業体験農園は農地を貸し借りしていないので、相続税等納税猶予制度も受けられます。
農業体験農園は受講者や農園主だけでなく、地域においても多くの利点があります。それぞれの利点をまとめてみました。ー愛知県総合農業試験場HPを参考にしたー
●「農のある暮らし」として充実した余暇活動ができる。
●説明会や講習会などで農作業や農業技術並びに地域文化などに触れられる。
●同じ作業を行うので、入園者同士に共通する話題が増え、交流が活発になる。
●はじめての人でも高品質の農産物が作れる。
●農家や他の入園者との交流ができる。
●新鮮で安全・安心な農産物を取得できる。
●農作物本来の味・旬の味が楽しめる。
●農機具を揃えなくても良く、手ぶらで入園できる。
●農作業の平準化・省力化が期待できる。
●農業経営全体で労働力の調整ができる。
●直売所向け農産物と組み合わせるなど多角経営できる。
●農園に対する入園者の評価が直接伝わるため、やりがいがある。
●相続税納税猶予制度が受けられる(個別に税務署の判断が必要)。
●地域住民の農業理解が醸成できる。
●農業振興・農業後継者確保など地域農業の取組発展が期待される。
●多面的機能を有する農地の保全がはかられる。
●農地の管理が行き届き、景観が保たれる。
●市民同士が交流する場が増える。
●市民農園を補完する機能がある。
●地域住民の農業理解が期待できる。