現在の農業の問題点の一つとして、消費者と生産者が分断されてしまっていることが上げられる。
全国各地の農家はJAの指導のもと地域が一体となって、同じ野菜を大量に栽培している。全国に向けて出荷している。農家が生産した野菜はJAが一括購入し、「・・・名産」「・・・産地」としてブラインド化し、長距離輸送して、大型スーパーマーケットで並べて売られている。それらを消費者が買って食べる。巨大な流通システムのおかげで、私たちは全国津々浦々の生産物が鮮度のよい状態で食べられるようになった。スーパーマーケットで売っている野菜は多くが県外産もしくは外国産であり、地元で作られた野菜を食べることができなくなっている。子どもたちは野菜がどのようにして育てられ、店頭までどのようにして運ばれてきたのか、野菜のどの部位を食べているのか分からないままに食べている。野菜を食べるとき、それを育てた農家のことに思いをはせることがことがない。生産者の顔が浮かばない、工業製品と同じ感覚で買って食べている。
農家の人も自分が専門的に作っている作物のことはよく知っているが、それ以外の作物を育てたことがなく、スーパーマーケット等で買って食べているのも現状である。農家で野菜を完全に自給自足(自産自消)している人は少なくなっている。自分が作った野菜はどこで売られ、いくらで売られているのか、おいしいと喜んで食べているのか、消費者の顔が浮かんでこない。工業製品と同じ感覚で、既定のサイズに合う野菜のみを収穫し、出荷している。
現在、私はJAの産直所に野菜を集荷している。どんな野菜を出すか、どんなサイズのものを出すか、値段をいくらにするかなどはすべて自分で決めて出荷している。出来が悪かったり値段が高すぎたりして、買ってもらえず持ち帰ることもしばしばである。買っていただいたお客さんから、「あれはおいしかった。また出してね」等と直接感想を聞くとうれしいものである。産直所のように生産者と消費者がつながっている場所は全国に広がっているが、そこで取り扱われる作物量は全体のごくわずかである。今後、作物の売買が産直所のようなスタイルになることは難しいが、地域で作物を通して生産者と消費者がつながるような関係、「農縁」が構築されることを願っている。そのことが地域の再生や活性化のきっかけとなるにちがいない。
農家では農業従事者が高齢化し、農業従事者の平均年齢が65歳である。農業後継者がいなくなり、放棄された田畑がよく見られるようになってきた。日本の農業は農地の荒廃と農業従事者不足は大きな問題である。
その対策として、小規模農家が放棄した田畑を農業法人や、やる気のある若手農業従事者にまとめて貸し出す「大規模化」農業や、小規模農家が生産や販売、機械の利用などを共同化して、集落内でまとまって農業を展開する「集約化」農業が押し進められている。ただし、これらは農家の住宅地に近く水平に広がった田畑であり、山間の狭い田畑は対象ではない。農家が点在する農村は切り捨てられている。
現在の日本の食糧自給率は、、、、(作成途中)